世界のOnline Travel Agency (OTA) サービスマップ

皆さん一度は利用したことがあるであろうホテルやフライトの予約ができるサービス、いわゆるOnline Travel Agency (OTA) サービスについて、世界各社の立ち位置をマッピングしました。

 

世界のメジャーサービスの立ち位置


下の図は世界の主なOTAサービス及びその周辺サービスを企業グループ毎にまとめたものです。囲われているものは同グループに所属するもの(グループ会社)、矢印は出資関係を表しています。

Expedia、Hotels.com、TripAdvisorなどを中心とする「Expediaグループ」と、Booking.com、Agoda、日本ではあまり知られていないPricelineなどを中心とする「Pricelineグループ」が二大巨頭であることが理解できます(2つともアメリカを本拠地とするグループです)。

また、面白いことに、いずれのグループも直予約機能を持ついわゆるOTA (Basic OTAと呼びます) 数サービスと、各Basic OTAの料金を比較できる比較サイト (Comparison, Comparing sitesと呼びます) 数サービス、そしてホテル向け予約管理ツールなどのいわゆるBtoBサービスを含むことが分かります。

残りのグループに目を向けてみると、いずれもNASDAQに上場している中国のCtripとインドのMakeMyTripがグループを形成しています。両サービスともグループ化はホームグラウンドから始めており、まだ国外サービスの取り込みはそこまで進んでいないようです。

各グループの特徴を見てみましょう。

  • Expediaグループ

このグループは、IACという、AskやVimeoなどのブランドを傘下に持つアメリカの巨大なメディア企業が親会社です。
なんといっても1991年にローンチされたOTA最古参のHotels.comを有すること、レビューではレビューで他サービスと圧倒的な差別化を実現し依然強いTripAdvisorを有することが最大の強みでしょう。
また、最近上場が取り沙汰されているドイツの比較サイトTrivagoや民泊の先駆けともいえるHomeawayもこのグループに入っています。

  • Pricelineグループ

このグループは、Booking.comの持つ圧倒的なトラフィックが強みでしょう。
2005年にスタートしたAgodaを2005年にグループ化したり、2012年にスタートしたHotelninjasを2014年にグループ化したりと、かなり意思決定の速い経営も特徴です。現在、中国のCtripにマイナー投資をしており、将来の展開が非常に気になるところです。

  • Ctripグループ

ご存知、中国トップのCtrip (携程) です。中国では圧倒的トップのトランザクション数を誇っていると言われています。ツアー専門のToursforfun (途风) をグループ化している他、既に上場しているもう一つのツアー専門サービスTuniu (途牛) と、中国版AirBnBであるTujia (途家) にマイナー出資しており、中国独占に向けた伏線を張っているようです。
また、インドのMakeMyTripにもマイナー出資しており、中国の次の市場もすでに見据えていることが分かります。

  • MakeMyTripグループ

インドのMakeMyTripは、2000年創業とインドのITサービスではとても早くから展開していました(Flipkart、Zomatoは2008年スタート)。2010年に他のトップグループからは遅れて上場して以降、2012年にまずタイのBasic OTAであるHotelTravel.comをグループに取り込みました。そして最近にはNaspersグループ傘下にあったインドOTA No.2のGoIbiboを自社グループ化し、話題となりました。これでインドではほぼ敵なしと言えそうですが、さらなる国外進出を含めた今後の展開が気になるところです。

サービスの誕生トレンド


続いて、上で紹介したものを中心とする当領域の各サービスがどのような時期に生まれ、どう再編されていったのか、アメリカを中心に時系列で見てみます。

下図は、アメリカのインターネット普及率と各サービスの誕生時期をマッピングしたものです。
いわゆる直予約が可能なBasic OTA、料金比較のComparing sites、また新たなOTAの姿を示すNeo OTAが、それぞれきれいに時期を分けて誕生していることがわかります。

Basic OTAはネット利用率が50%に満たない時代から始まっています。

そして半数以上の人がインターネットを利用する時代となり、Basic OTAの競争も激しくなってきた2000年代にComparing sitesが多く出現しました。

そしてほとんどの人にとってインターネットが当たり前のものとなった2010年以降には、ホテルの直前予約に特化したサービスや民泊など、特化型あるいは全く斬新な発想のサービス、Neo OTAが登場し始めました。現在、AirBnBが頭一つ抜けていますが、今後はこれらNeo OTAのうち次に誰が飛び抜けていくのか?そして既存のサービスグループはどのようにそれらを取り込んでいくのかが注目されます。

東南アジアの状況


さて、アメリカを中心とする今までの歴史を踏まえ、これまであまり登場してこなかった東南アジアのサービス群について考えてみたいと思います。

下の表は、東南アジアを拠点とするサービスのうち、Series A以上の調達をしているサービスの一覧です。圧倒的に少なく、まだまだマーケットが立ち上がりきっていないことがうかがえます。

また調達はしたもののサービスの展開自体はまだまだこれからというケースも多く見られ、これらが軌道にのっていくかどうかが今後このエリアでの当領域のスタートアップエコシステムが発展していくかどうかに非常に大きく影響していくでしょう。

サービス数自体、他エリアに比べ圧倒的に少ないですが、一方でインターネット普及率とくらべてみるとはやい展開を見せています。おそらく、アメリカが経験した順番を沿うことはなく、各サービスが入り混じりながら誕生・拡大していくことが予想されます。

中国、インドに次いで注目されるマーケットに、既存のグローバルグループがどのようなアプローチをかけてくるかも今後興味深いところです。

Full slides:

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